ウィーンの美術史美術館の絵画部門は、所蔵作品があまりにも素晴らしく、ひとつひとつの作品に感動しすぎて、美術館を出るころにはグッタリ疲れてしまったほどでした。
3時間かけて観賞しましたが、時間が足りなかったです。いつか再訪したい!
ウィーン美術史美術館を鑑賞して、「この作品は見逃せないぞ…」と思った作品を、世界的に有名な作品や、私が特に気に入った作品を織り交ぜてご紹介します!
私はネーデルランド・ドイツ絵画→イタリア・スペイン絵画の順に回ったので、その順路でご紹介していきます。
ネーデルランド・フランドル・ドイツ絵画
美術史美術館の絵画部門は、2階の左側にネーデルランドやドイツの絵画、右側にイタリア・スペイン絵画と特別展と、大まかに分かれています。
まずはネーデルランド・ドイツ絵画をご紹介していきます。
クラナッハ「ホロフェウスの首を持つユディト」
いきなりドギツイ絵…。旧約聖書のヒロイン、敵将の首をはねたユディトです。
私はクラナッハの描く高慢そうな女性の顔ってあまり好きじゃないのですが、こういう場面にはサディスティックな雰囲気が非常に出ていますね。
デューラー「マクシミリアン1世の肖像」
ハプスブルク家のマクシミリアン1世を、ドイツ絵画の巨匠デューラーが描いた肖像画です。
ハプスブルク家に特徴的な顎を描きつつも、皇帝の威厳が伝わってくる作品です。
インスブルックに行く予定がある方は、「黄金の小屋根」を作った皇帝ですので、この肖像画を覚えておくとちょっと親近感がわくかも!
「マクシミリアン1世とその家族」
こちらも、皇帝マクシミリアン1世と、その家族を描いたベルンハントという画家の作品。
この絵はハプスブルク家の人々の、顔の特徴がよく出ているということで、よく歴史の本などで目にしますよね。
中野京子さんの「名画で読み解くハプスブルク」にも登場していました。
デューラー「ヴェネツィアの婦人の肖像」
こちらは小さなデューラーが実際にヴェネツィアに出かけた際に描いた、ヴェネツィアの女性の肖像画、小さいですが非常に存在感のある作品。
ヴェネツィアといえば、高級娼婦が活躍したことで知られています。
この女性の素性はわかりませんが、一筋縄ではいかない性格が、表情に出ている感じがありますよね。
バルドゥング 「人生の三段階と死」
こちらは個人的に印象に残った絵。西洋の死生観に関する本で見たことがあった絵ですが、思いがけず実物に会えてビックリ!
自らの姿を鏡で見てうっとりしている女性の後ろから、砂時計(時間が過ぎ去ることの象徴)を持った死が迫り、その死を老女が止めようとしています。
「人生の三段階」と言うからには、足元の幼児→若い女性→老女は同一人物ということでしょうね。何一つ文字はなくても、メッセージが伝わってくる絵画です。
ブリューゲルのコレクションからベスト3!
ウィーン美術史美術館は、世界最大のブリューゲルコレクションを誇ります。
その中でも、本当にこれだけは見逃せないという超大物作品をご紹介します。
「農民の踊り」
「バベルの塔」
「雪中の狩人」
ウィーン美術史美術館で観賞できるブリューゲル作品については、別ページにまとめています。詳しく知りたい方はこちらへ→ウィーン美術史美術館はブリューゲルの傑作がズラリ!
レンブラント「自画像」
ウィーン美術史美術館には、レンブラント作品がいくつかあります。その中で最も有名なものがこちらの「自画像」。
暗くて地味な作品で、レンブラントと言われなければ通り過ぎてしまいそうですが、じっと見ていると味のある作品だと感じました。
ファン・ダイク「カルロ・エマニュエーレ・デステの肖像」
ファン・ダイク作の、貴族のご子息と思われる人物の肖像画。
いや、あまりにイケメンだったので、心に残りました(笑)。近くに、似た雰囲気の別のイケメン少年の肖像もあります。
ルーベンス「メデューサの頭部」
ウィーン美術史美術館にはルーベンスの作品も数多く展示されていますが、一番インパクトる作品が「メデューサの頭部」。
蛇の髪の毛を持つギリシャ神話の怪物で、目が合った相手を石に変えてしまう恐ろしい魔力を持ちます。
英雄ペルセウスによって首を切られるメデューサの最期を描いた作品ですが、最後まで相手を石に変えようと目を見開いていたかのような、メデューサの禍々しさにゾクッとします。
フェルメール「絵画芸術」
ウィーン美術史美術館ではフェルメール作品に出会えます!
私にとって初フェルメールだったのですが、「静けさと暖かさの中に神秘さがある…フェルメール確かにスゴイ!」と感動しました。
私が入館した時は、このフェルメール作品が最も人気で、常に団体ツアーや修学旅行生が取り囲んでいて、なかなかゆっくり観賞できませんでした。
イタリア・スペイン・フランス絵画
次に、2階の右部分を占める、イタリア・スペインなどのラテン系絵画をご紹介します。
ティントレット「スザンナの水浴」
この作品はすっごく素敵でイチオシです!
今まで見たことがあるティントレット作品の中で、一番好きです。
しかし題材は旧約聖書のエピソードで、スザンナという人妻の入浴を好色老人がのぞき見るという…しょうもない場面なんですけどね(笑)。
ヴェロネーゼ「ホロフェルネスの首を持つユーディット」
ウィーン美術史美術館はヴェネツィア派ヴェロネーゼの作品が多いです。
その中で一番目を惹いたのは、こちらのユディト。敵将の生首を持っていますが、お花でも抱えているかのような涼しげな美人として描かれています。
このページの最初に紹介したクラナッハ作品と同じ題材なので、くらべてみると面白いです。
ルブラン「マリー・アントワネットの肖像」
ウィーン美術史美術館には、有名なマリー・アントワネットの肖像画があります。
こうやって見ると、やっぱりマリー・アントワネットはかわいいなあ。
ルカ・ジョルダーノ「大天使ミカエルと叛逆天使たち」
この絵は個人的に大好きでした!
あまりにもわかりやすい勧善懲悪的な図ではあるんですが、大天使ミカエルがイケメンすぎる…。
作者のルカ・ジョルダーノはバロック期の画家で、この絵は宗教改革の時代に描かれ、カトリックの対抗勢力に対する勝利を示しているのだとか。
カラヴァッジョ作品3点
ウィーン美術史美術館にはカラヴァッジョ作品が3点あります。
ゴリアテの首を持つダヴィデ
このダヴィデ、イケメンすぎますね。ムサイ男の生首を持っているとは思えない雰囲気です。
荊冠のキリスト
カラヴァッジョの特徴である、光と闇のコントラストが美しい作品です。
カラヴァッジョの、残酷な場面を美しく描く画力はスゴイと感じます。
ロザリオの聖母
幼子キリストが、カラヴァッジョ作品にしてはめずらしい、あどけない無防備な表情を見せています。
ベラスケス「王女マルガリータの肖像」
ウィーン美術史美術館には、ベラスケスの有名作品「王女マルガリータの肖像」があります。
こちらは「白いドレスの王女マルガリータ」。5歳の時の肖像です。
成長して8歳になった王女マルガリータ。「青いドレスの王女」と呼ばれる絵です。
王女マルガリータ、可憐なのですが、どこかはかない雰囲気が漂っていますよね。実際にマルガリータは、21歳で夭逝しているそうです。
ベラスケス「フェリペ=プロスペロ王子」
こちらも非常に有名なベラスケス作品「フェリペ=プロスペロ王子」の肖像画。
幼いのに王家の子らしく、威厳を感じさせるベラスケスの筆はさすがです。
この王子が女児用ドレスを着ているのが、絵全体を不思議な雰囲気にしています。
当時は女の子の方が死亡率が低かったため、死神が女の子だと勘違いしてスルーするように男児に女児服を着せていたと、中野京子さんの本に書いてありました。
しかしその甲斐なく、この王子は大人になれずに病没してしまったそうです…。
アルチンボルド「夏」
独特の奇妙な画風で知られるアルチンボルド。
果物・野菜・植物などを巧みに組み合わせて、人間像を描いています。現代アートのようで、500年近く前の作品とはとても思えません。
「夏」の他に「冬」「水」「火」もウィーン美術史美術館で観賞できます。
「スレイマン1世の肖像」
「あ!世界史の教科書で見たあの絵!」
…と言いたくなる、オスマン・トルコのスレイマン1世の肖像画。
ヴェネツィア派の画家によって描かれたもので、ほとんど肖像画が残っていないスレイマン1世の、貴重な肖像画だそうです。
ラファエロ「草原の聖母」
ウィーン美術史美術館にはラファエロ作品もあります。
聖母マリアと幼子イエス、幼児姿の洗礼者ヨハネの3人が神々しく、だけど親しみやすく描かれています。
パルミジャーノの2作品
パルミジャーノはイタリアのマニエリスム期(ルネサンスの後)の画家ですが、代表作がこのウィーン美術史美術館にあります。
まず「弓を作るキューピッド」。何てカワイイ!
私が今まで見たことがあるキューピッド像の中で、一番キューピッドの姿としてピンとくる姿をしています。
下の方で泣いている幼児たちの解釈はさまざまだそうですが、キューピッドが本を足で踏みつけているのは、愛が理性に勝ることを示しているのだとか。
こちらは非常に小さい作品ですが、見逃さずに観賞してほしいおすすめ作品です。
パルミジャーノによる「凸面鏡の自画像」。
凸面の鏡に映った自分の姿を描いているのですが…何とも不思議な作品。ずっと見ていると、自分が絵に吸い込まれてしまいそうな気分になりました。
コレッジョの2作品
イタリアのパルマの作家コレッジョも、ウィーン美術史美術館に傑作が所蔵されています。
まずこちらは「イオ」。
一瞬何を描いているのか分かりにくいかもしれませんが、ギリシャ神話モチーフの絵で、雲に化けたゼウスが、美女のイオを抱きとっているシーンなのです。
よく見ると雲がイオの腰に手をまわし、口づけているのがわかりますが、非常に官能的で、人によってはむしろ不快を感じるかもしれません。
こちらは「ガニュメデスの誘拐」。
今度はゼウスが美少年にムラっと来て、鷲に化けて美少年をさらってしまうという場面。ゼウスの好色っぷりにはあきれるやら、むしろ感心するやら…。
この2つの作品は大きさもほぼ同じ、主題も似ているのですが、ゼウスのエネルギーを感じるのと、大神ゼウスに見そめられた二人は、果たして幸せだったのか?と考えさせられてしまいます。
この絵を見ても…イオもガニュメデスも笑っているのかそれとも悲しんでいるのか…判断できない微妙な表情をしているのが、味わい深い作品です。
絵画展示室の外にも名作が!
ここまで絵画展示室内に展示されている作品を紹介しましたが、ウィーン美術史美術館には、絵画展示部門の外にも、チェックしておきたい名作があります。
クリムトの壁画
エントランスから絵画展示のある上のフロアに上がる階段の上部に、クリムトによる壁画が描かれています。
左側のギリシャ風の女性は知恵と戦の女神アテナ、右側にはエジプト風の女性が描かれています。
ここにクリムト作品があることは有名なのかと思いきや、意外とスルーしている観光客が多かったです。
カノーヴァ「テセウス」
階段を上り切った場所には、18~19世紀に活躍したイタリアの彫刻家カノーヴァの作品があります。
ギリシャ神話の英雄「テセウス」の像で、力強さと美しさのある作品ですが、こちらもスルーする観光客が多いです。
通り過ぎるのはもったいない作品なので、ぜひ足を止めて観賞してみてください!
まとめ
以上、駆け足でしたが、私がウィーン美術史美術館で心に残った作品をまとめてみました。
ここに紹介しきれなかった傑作も、たくさんあります。
素敵作品目白押しのウィーン美術史美術館は、ぜひ時間をたっぷりとって、思う存分お気に入り絵画と向き合うことをおすすめします!