ウィーンは「建築の町」としても知られています。
町を歩いていると不意に重要な建築物が現れ、建築にあまり詳しくない私は、何度もつい見逃してしまいそうになりました。
しかし、そんな素人の私でも見逃さない建築物が、エンゲル薬局。
二人の美しい天使が薬局の入口を飾っていて、驚くほど美しい薬局なんです!
エンゲル薬局を飾る美しい二人の天使
エンゲル薬局の「エンゲル」は、エンジェル(天使)のドイツ語読みですが…
名前の通り、二人の美しい天使が薬局の入口を飾っています!
羽をいっぱいに広げた、スタイル抜群の天使さんたち。
こんな美しい薬局で購入した薬は、天使に癒されて効き目がありそう!
エンゲル薬局の天使さんは実はモザイク
この美しい天使さんたちは、離れてみると普通の絵に見えますが、実はモザイクなんです。
間近でみると、こうやって一つ一つ石がはめ込まれて描かれているのがわかります。
モザイクのため、描かれた絵よりも少しだけ立体的に見える姿が、どことなく神秘的な雰囲気を醸し出しています。
エンゲル薬局に描かれた蛇にはどんな意味が?
天使が持っている杯の近くにも蛇が描かれていますが、エンゲル薬局の上の方にも、壺に巻き付くような蛇の絵が描かれています。
なぜ蛇が描かれているかというと、ヨーロッパ世界において、「杯に巻き付く蛇」は薬学のシンボルで、ヒュギエイアの杯と呼ばれています。
ヒュギエイアとは、ギリシャ神話で健康を司る女神で、よく蛇を従えた姿で描かれます。
蛇はキリスト教ではイブに知恵の実を与えた悪者ですが、ギリシャ世界では脱皮をする習性から、再生・回復の象徴とされていたようです。
作者は世紀末芸術のオスカー・ラスケ
このエンゲル薬局の創業は16世紀と古いのですが、現在のような天使が描かれた姿に改装されたのは20世紀初頭です。
その頃にオーストリア周辺で流行した、世紀末建築(別名ユーゲントシュティール)のひとつです。
作者さんは建築家でもあり画家でもあったオスカー・ラスケ。
どこかで聞いたことある名前だなあ…。
と思ったら、ベルヴェデーレ上宮の絵画館で見た「愚者の船」の作者さんでした。
この作品は含蓄があり非常におもしろかったです!
エンゲル薬局とはまったく趣が異なる作品ですが、ベルヴェデーレ上宮に入った際は、ぜひこの船の絵を探して、美しい天使さんたちとは違う作風を楽しんでみてください。