チェコのチェスケー・ブディェヨヴィツェを朝8時の電車で出発し、オーストリアのリンツで乗り換え、午後2時前にはオーストリアのインスブルックに到着するはずだった1日。
朝8時の電車は、発車10分前になって、突然運休となりました!!!
振替で乗車する次の10時台の電車に乗るために、駅の外のマクドナルドから、チェスケー・ブディェヨヴィツェ駅まで戻ってきた私。
チェスケー・ブディェヨヴィツェからリンツまでは2時間の旅の予定ですが、旅の疲れをためないために、フンパツして1等車の切符を予約してあります。
さあ、今度こそ私は、快適にリンツまでたどり着けるのか…。
リンツ行きの電車は20分遅れになっている!
チェスケー・ブディェヨヴィツェ駅の電光掲示板を見上げると…
おい。上から3つ目の10時3分発リンツ行きは20分遅れになっているじゃないのよ。
もー!!!すでにインスブルック到着が2時間遅れになっているのに、あとどれだけ遅れるつもり~!?
インスブルックには1泊しかしないので、なるべく早くインスブルックに到着したいのに!
4日前に、プラハからチェスケー・ブディェヨヴィツェまでの区間を利用した電車は、途中がバス輸送になりました。
この日の8時に乗るはずだった電車は運休になりました。
そして、この10時の電車は20分の遅延…。
一本たりとも予定通りにきちんと走っている電車がナイッ!それがチェコ鉄道クオリティだと言うのか…!
リンツ行きの電車はまさかの一両編成!
それでもね、朝8時に食らった「運休」という攻撃に比べると、「遅延」の方がいくらもマシっすよ。満塁ホームランと、ソロホームランくらいの違いがあるっすよ。
で、時間になったので、ホームに上がりました。
よし。なんか立派そうな電車が来てるね。これなら1等座席でゆったりとくつろげるだろう…。
しかし、ホームの電光掲示板を見ると、どうも電車番号も行き先もリンツ行きではない。あれー?このホームで合っているハズなんだけどな…。
同じホームにリンツ行きに乗りたい若い女性がいて、話しかけてみると、「ホーム番号はここで合っているはずよ…」と彼女も不思議そうな顔をしていました。
すると………この立派な電車の前方に、ちまっと停まっていた、荷物輸送か何かに見えた小さい車両があったのですが、その車両の方から声がする…。
リンツ行きの電車はこちらですよー!!!
えっ?
こ、これ!?
一両編成だよ!?リンツ行きの国際電車だよ!?このちんまりした電車でリンツまで行くの???
一等車を購入したお金は泡と消えた…
ハイ、リンツ行きはまさかの一両編成のちび電車でした。
えっ、ちょっと待って!一両編成ってことは、1等車両なんかないじゃん!
車掌さんに1等を予約しているチケットを見せて、「差額は払い戻してもらえるんですか?」と聞くと、「ノーーーーー(すごい語尾が長かった)」とのお答え。
なぜ文明社会でこんなことがまかり通るんだ…。
なぜ1等座席を販売しているのに、1等車両を連結しない電車を走らせるんだ…。
人生は理屈では答えが出ないことばかりなのだね…。
…とはいえ、私は何となく8時台のリンツ行きが運休になった理由が分かった気がしました。
おそらく、切符があまり売れなかったんでしょう。この10時台の電車も乗客が少なかったし。
だから、走らせてもあんまり利益がないから運休にしちゃうと。
…公共交通機関の「公共」の意味って何だろう…。
またもやバスに乗り換えることが判明!
一等車がなく、一等座席切符がムダになって、怒りなんだか悲しみなんだか笑いなんだかわからない感情をもてあましていた私の耳に、車掌の次なる声が響きました。
この電車は途中がバス接続になりまーす!××駅でバスに乗り換えまーす!
ま・た・か!!!
プラハ→チェスケー・ブディェヨヴィツェの1等旅も途中をバス輸送にしやがったけど、またもやかよーーーっ!!!(言葉が荒れてきた私)
バスが苦手だから鉄道を予約したんだよ!
乗り換えたくないからわざわざ直通便を選んで予約したんだよ!
旅の体力を温存するためにフンパツして1等車を予約したんだよーッ!!!
そんな旅人のささやかな努力を、すべて無に帰すチェコ鉄道。
チェコ鉄道は切符が安いことで知られていますが、「遅延・運休・バス振替輸送なんでもござれ」なので、ぜんっぜん安くないと感じました!
もうほとんど無の境地となった私の視界に、ぼんやりと見えたのが「WC」の文字。
もともと電車で2時間だった道のりがバス輸送に変更になるなら、あと何時間かかるか未知数で、次にいつトイレにありつけるかわからないな…
と、トイレに入っておくことにしました。
すごいトイレでした。どのくらいすごいかというと、便器の奥に線路が見えました(実話)。
しかしそれほどのトイレでも、この時入っておいて、本当によかったんです。
雪が降ってきたよ…終わりの見えないバス旅
私がトイレから出ると、すぐに電車は停車し、その駅でバスへの乗り換えとなりました。
古いバスです。市バスみたいなバスで、長距離向きとは思えません。案の定ガタガタ揺れました。
私、バス苦手なんですよ~…。旅行でもバスには、よっぽど設備が整ったバスでない限り、2時間以上は乗らないようにしているのに…。
己をよく知った旅程を立てたはずなのに、旅人のささやかな努力を無に帰すチェコ鉄道っ!!!
このバスは、鉄道の振り替えなので、鉄道駅にひとつひとつ停まっていきます。
そのたびにバスから車掌が降りて、駅のホームに電車を待っている乗客がいないかチェックして、また戻ってくるの繰り返し…。
電話して確認すればいいじゃん!!!それとも全部無人駅なの!?
そして、ついにバスは何でもないところで謎の停車をしました。「STOP」って書いてあるから停まったのかねえ?どうなんだよねえ?
そしてこの謎の停車中(15分も停車した)に、窓の外では雪が降り始めました…。
ぼんやりと雪を眺めながら、もういろいろなことがどうでも良くなってきました。
何時にリンツに着こうが、もう私の知ったことじゃないよ…。インスブルックに最終的に着くのが何時頃かだなんて、それは神のみぞ知ることなんだよ…。
バスはようやく走り始めたけど、雪が強くなってきた…。
雪で道路は凍結するから、当然徐行運転になるわけで、のろのろ走るバス。のろのろでも何でもいいから、とにかく我をリンツに連れて行っておくれ…。
自分のことばっかり考えちゃいけないね。ワンちゃん含めて、ほかの乗客さんも無事に目的地に連れて行っておくれ…。
それにしてもお行儀のよいワンちゃんでした。
そして1時間半以上、この古いバスにガタガタ、ガタガタと揺られているうちに私はバス酔いしてきました。
時計を見ると12時が過ぎてる。たぶん、空腹のせいもあるだろうな。私はお腹がすいているとバス酔いしやすいんです。
一等車快適鉄道旅のハズが、どうして今私はこんなに苦しんでいるのだろうか…。
「何か食べるものなかったかなあ…」と、バックパックをごそごそしてみると…
あったーーー!!!おやつの「FIDORKA」!
昨日、もう必要ないチェココルナ(チェコ独自の通貨)を使い切ってしまうために、スーパーで購入しておいたんだった!
この「FIDORKA」を食べると、少しだけ気分が和らいだので、誰も私のことなんか見てないし、ゴソゴソと服を緩められる所は緩めて、首を後ろに寄りかからせて、目を閉じてジッとしておくことにしました。
このバスに乗って2時間ほど経過したところで、たまたまふっと目を開けると、「ここからはオーストリアです」という標識が見えました。
もうね、早くチェコを去ってしまいたくて、自然と一人でガッツポーズをしてしまった自分が、本当に可笑しかったです…。
またまたバスだけどましなバスになった
リンツはチェコとオーストリアの国境近くの町なので、国境を越えてバスが停まった時、リンツに着いたかと思いましたよ。
しかし、それは淡い希望で、ここからさらにバスに乗り換え!!!
チェコの領域ではチェコ鉄道(CD)、オーストリア領域ではオーストリア鉄道(ÖBB)がバスを出すという決まりがあるのかもしれませんね。
でもÖBBのバスは、チェコのバスと比べてずっと快適で乗り心地がよく、一安心しました。
窓の外も、すっかりチェコとは違う現代風の町並みになっています。
バスに乗っているうちに「リンツ(Linz)」の標識も見えてきて、「そろそろリンツに着くかな~」と期待する私。
とどめの電車乗り換えで親切に出会う
しかし…バスは、どう見てもリンツとは読めない名前の駅で停車しました。
今度はこの駅で、リンツ行きの電車に乗り換えろという…。
しかも駅にはエスカレーターもエレベーターもなく、バス酔いが少し残る体で、よろよろとスーツケースを持ち上げようとしたら…
ずーっと道中一緒だった大柄な男性が、すっと私のスーツケースを持ってくれました!
えっ!ありがとうございます!ご自身も大きなバックパックを背負っていたのに!
オーストリア人っぽかったので、「ダンケシェーン、ダンケシェーン」と、私の脳内にストックされている数少ないドイツ語を絞り出す私。
彼は他の乗客男性に、「君、ヒーローだね」と声をかけられていました。
本当にヒーローでした。疲れていたので助かりました~!
ああ、やっと電車に乗れた…。もちろんこの電車も一等車両などなかったけど、もうそんなことどうでもいいんだ…。
今、再確認したけど、私は電車が好きだ…。
ちゃんとリンツ行きになっている。ようやくリンツに到着できそうです。
しかも、その横にWCマークがあり、そういえば3時間近くトイレに行ってないことに思い当たり、すぐにトイレに行きました。
そう、あの線路が見えたトイレに入っておいて、本当に正解だったんです。
バスの中でバス酔いにプラスして、トイレに行きたくなったりしていたら、もはや私の精神は崩壊していたでありましょう…。
リンツには1時間半遅れで到着
あーもう本当に疲れました。
ドナウ川みたいなのを渡ったけど、「川だね」という感想しか出てこないほど疲れました。
そして、ようやくようやくようやくリンツ駅に到着しました!!!
実はゴールじゃないけどね!ここからインスブルックに行くんだけどね!とりあえずチェコを脱出できただけでも良いんだ!
この時の私は、「もうチェコなんか行かない!」と、自分史上最もチェコから心が離れていました。
まあまあ時間が経った今となっては、もう一度くらい行きたいです(笑)。鉄道はもうコリゴリだけど。
リンツ駅に到着したのは、予定より1時間半近く遅れた13時15分でした。
よく考えると、もともとは10時の電車ではなく8時の電車に乗るはずだったんだから、1時間半遅れではなく3時間半遅れですね。
とにかく遅れまくったとはいえ、何とかリンツまでたどり着けた喜びを、今は噛みしめましょう…。