ウィーンで最も楽しみにしていた美術館が、美術史美術館!
美術史美術館は非常に見どころの多い美術館なのですが、訪問したかった理由のひとつが
ブリューゲルを見たい!
でした。
想像以上に素晴らしいブリューゲル作品にお腹いっぱいになりましたので、私が観賞した作品をご紹介します!
ウィーン美術史美術館は世界最大のブリューゲルコレクション!
ウィーンの美術史美術館は、世界最大のブリューゲル作品コレクションを誇ります。
しかも、ただ多くの作品を持っているというだけでなく、「農民の踊り」や「子どもの遊戯」など、世界史の教科書にも載っているブリューゲルの傑作を所有しています!
ブリューゲルの作品を12作品所有していると言われていますが、修復中だったり、貸し出し中だったりして、常にすべての作品を鑑賞できるわけではないようです。
私が足を運んだ時は、9作品を鑑賞することができましたので、一気にご紹介します!
農民の踊り
まずは世界史の資料集で見たあの絵!「農民の踊り」。
宗教画や貴人の肖像画が中心だった時代に、何者でもない農民の姿を描き、「農民の画家」とも呼ばれるブリューゲルを象徴する作品として、よく紹介されますよね。
画面上には麗しの美女も威厳ある美男もいなくて、どこにでもいそうな農民が、飾り気のない表情で楽しそうに踊っています。
左の方でキスしている男女も、まったく美化されていなくて、普通の人間たちの普通の生きざまという感じです。
美女も美男も描いていないけど、素敵な色合いや、農民の足音が聞こえてきそうな軽やかな足取りが、絵全体を魅力的に仕上げています。
農民の婚宴
こちらも農民シリーズ「農民の婚礼」。
この作品も名もない庶民たちがズラッと座って、結婚パーティのお食事を食べているだけなんですが、やっぱり構図や色合いがいいんでしょうね。
ずっと見ていられる魅力があります。
この何でもなさそうな日常の風景。スープを食べている男性の表情。
私たちの人生も、こういう何気ない風景の連続なんだろうなあと思います。
何でもない風景なんですが、絵画としてしっかり仕上げてしまうブリューゲルのすごさですね。
バベルの塔
ブリューゲルの代表作のひとつ「バベルの塔」。
人間が天に届くような建築物を作ろうとして、神の怒りに触れたという旧約新書のエピソードです。
科学文明が躍進し続ける現代でも、戒めにできそうなストーリーというのがスゴイですよね。
ブリューゲルが描いたバベルの塔は、ローマのコロッセオをモデルにしていると言われています。
言われてみると似ていますよね。
でも、コロッセオと違い、空に浮かぶ雲を突き抜けそうな高さです。
しかし、この作品も全体の色彩が綺麗だったなあ…。
画面左下には、バベルの塔建築を計画したというにニムロド王だと思われる人物が描かれています。
王の背後の風景ですが…洪水が起こっているように見えますよね?
ニムロドはノアの子孫で、次にまた洪水が起こったときに備えて、バベルの塔を建てたという説もあるそうです。
そうだとすると、そんなに悪い王様という感じはしませんね。
謝肉祭と四旬節の喧嘩
ビッシリと人々が描きこまれたこの絵のテーマは「謝肉祭と四旬節の喧嘩」。要するに、年中行事、お祭りの絵ですね。
この絵の中には、よくよく見ると不思議な格好をした人物がたくさんいます。
「何だこりゃ?」と思いますが、謝肉祭(カーニバル)の仮装行列を描いているのだとか。
しかし、その後ろの樽に乗っている男性は何やってるんですかね?タダの酔っ払い?
子どもの遊戯
さて、こちらは有名作品。「子どもの遊戯」。
小学校の昼休み時間の校庭のように、たくさんの子どもたちが思い思いの遊びにいそしんでいます。
書かれている遊戯は、現代人が見ても何をしてわかる遊びも多く、つい細かいところまでじっくり見てしまいます。
それにしてもこんなに多くの子どもたちが描かれているのに、画面があまりうるさく感じないのがスゴイですよね。
ゴルゴタの丘への行進
こちらはブリューゲルにしては珍しく、新約聖書のストーリーを描いた宗教画です。
「ゴルゴタの丘への行進」もしくは「十字架を担うキリスト」と呼ばれる作品で、十字架を背負い、ゴルゴタの丘まで歩いて行くキリストの物語が主題です。
キリストは画面中央で十字架を背負い、倒れている人物ですが、これだけ多くの人物が絵に描きこまれているため目立ちません。
宗教画ではなく、民俗画のようにも見えてしまいます。
この絵がかろうじて宗教画っぽく見えるのは、画面右の手前にキリストの運命を嘆く聖母マリアや弟子たちの姿が描かれているおかげです。
しかし聖母マリアたちの悲しみは、あまり観賞する者に迫ってこず、
やはりブリューゲルは宗教画より庶民の姿を描く方が得意なのかなあ…
と感じました。
雪中の狩人
ここからはブリューゲルの有名な「連作月暦画」と呼ばれるうちの3枚です。
こちらは12・1月を描いた「雪中の狩人」。
いやー、これは素敵でした!雪の白さと、人々や木々の黒さがお互いを引き立てあっています!
何となく、江戸時代の歌川広重が描いた浮世絵を思い出してしまいます。
何て言うかこの絵の魅力は理屈じゃないです。言葉で説明できません。ぜひ現地で観賞してみてください!
右上の凍った池?の上には、天然のスケートリンクを楽しんでいる庶民の姿も見られます。
ブリューゲル作品は隅々まで楽しめるのが魅力です。
牛群の帰り
こちらは10・11月、秋ごろの季節を描いた「牛群の帰り」。
この牛さんたち、1匹1匹よーくみると、すっごい毛並みがキレイです。
天候が変わりやすい秋のためか、雨雲が迫っている薄い青空の描き方や、その下に広がる川の風景も見事です。
暗い日
こちらは2・3月を描いた「暗い日」。晩冬~初春の季節ですね。
しかしこのタイトル、何だか意味深ですよね。「暗い」って、ただ季節柄天気があまりよくないことを指しているだけなのかなあ?
右の方に描かれた人物たちは、謝肉祭(カーニバル)の準備をしているらしいのですが、お祭り気分はほとんど伝わってこなくて、淡々とした日常に見えます。
全体的に色調が地味で、今回観賞したブリューゲル作品の中では鑑賞者が殺到していない絵だったのですが、何となく気になって、何度も穴があくほど見つめてしまいました。
ブリューゲルってたくさんいるの?
ブリューゲルは画家一家で、「ブリューゲル」と単純に呼ぶと、どのブリューゲルさんを指すのかわかりません。
とはいっても、ブリューゲル一家で一番有名なのはピーテル・ブリューゲルで、ここで紹介したものは、すべてピーテル・ブリューゲルの作品です。
このピーテルさん、二人の息子が画家で、一人はヤン・ブリューゲルなのですが、もう一人は同姓同名のピーテル・ブリューゲルなんです。ややこし…。
そのためピーテル・ブリューゲル(父)、ピーテル・ブリューゲル(子)と分けて表記されることもあります。
もっとややこしいことに、ヤン・ブリューゲルにも、同姓同名のヤン・ブリューゲルという息子の画家がいるんですよ~…。
ブリューゲル一家、名前の選択肢が少なすぎ…。
ブリューゲル作品が集まっている部屋は?
ブリューゲルの作品は、ありがたいことにすべて同じ部屋に集められています。
階段で2階に上がり、オランダやドイツの絵画を集めたエリア、画像で22と書かれた方の部屋に入り、二つ目の部屋、21の番号が振ってある部屋番号Ⅹがブリューゲルルームです。