ウィーンで絵画鑑賞といえば、クリムトやシーレなどの世紀末美術がよく知られていますが、ハプスブルクコレクションがあるためか、北方ルネサンスの傑作にも多く出会えます。
その中でも私がウィーン滞在で特に楽しみにしていた作品がヒエロニムス・ボス「最後の審判」です。
ボスの作品は真筆は世界に30ほどしか残されていないと言われ、その中でも貴重な作品のひとつと言われるのが「最後の審判」です。
この「最後の審判」をウィーンで堪能してきましたので、レポートします!
ボス「最後の審判」はどこにあるの?
ボスの「最後の審判」は造形美術アカデミー絵画館が所蔵していますが、この絵画館は現在工事のため閉鎖されています。
ボス「最後の審判」をはじめとした、造形美術アカデミー絵画館の主要作品は、工事期間中は演劇博物館(Theater Museun)という建物内で展示されています。
演劇博物館(劇場博物館)は、ウィーン中心部のほぼど真ん中にあり、リンク外にある造形美術アカデミー絵画館よりもアクセスしやすいくらいです。
演劇博物館には「ボスの『最後の審判』を展示してるよ!」という感じの看板があり、わかりやすいです。
「最後の審判」とご対面!
さて…いよいよボスの「最後の審判」とご対面です!
結構大きいです!高さは人間サイズくらいあります。
ボスの作品は今まで小さな絵しか見たことがなかったので、嬉しいっ!
左側がアダムとイブの楽園追放、真ん中の上部が天国、真ん中の下半分と右側が地獄絵というスタイルです。
「最後の審判」といえば、最後の審判で天国へ行くものと地獄へ落ちるものが描かれることが多く、キリストの右手側に天国、左手側に地獄といった構図が多いですが、ボスの「最後の審判」は、画面のほとんどが地獄絵なのが特徴的ですね。
「最後の審判」のコミカルなモンスターたち
「最後の審判」を題材にした絵は、バチカンのシスティナ礼拝堂に描かれたミケランジェロ作品のように、おどろおどろしくて恐い絵が多いです。
ですが、ボスの「最後の審判」は、あまり恐くありません。おどろおどろしさもなく、むしろどこか清純なイメージさえ受けます。
というのも…地獄でせっせと働いているモンスターたちが、グロかわいいんですよね。
頭部から直接足が出ているこの人…罰されている人間なのかモンスターなのかもワカラナイ…。とにかくシュール。
たぶんこの人は、大食感か大酒飲みか、どちらかの罪を犯した人でしょうね。地獄で延々と何かを飲まされる罰を受けている感じです。
でも、この罪人を押さえている蝶々の羽みたいなものがついているモンスター可愛いし、「あ、よいしょ」みたいに樽を持ち上げているモンスターもコミカルですよね。
こちらも場面としては残酷なんですが、モンスターが皆しゅくしゅくと働いている姿や、罰を受けている人々が淡々としているのがシュール。
左上で罪人をフライパンで焼いているモンスターの足元には卵が…。普通にお料理しているみたいに…。
ボスさん卵好きっすよね…。この卵はモンスターなのか罰を受けている人間なのか不明。
悪魔の親玉…ラスボスですかね?ダンテの「神曲」では、地獄の一番深い場所には悪魔大王がいるらしいんですが。
これなんか本当に意味不明。水から出されている魚が一番かわいそうって話。魚の頭の所にいるモンスターは宇宙人にしか見えないし(宇宙人見たことないけどさ)。
たぶん地獄の大釜で焼かれているシーンなんだけど、真ん中付近、顔だけ出している黒い鳥みたいなモンスターがかわいすぎる。私の好みですよ。
ちょっと一息つきましょうか。こちらは絵の上部に描かれている神の世界。恐ろしいほど下で繰り広げられている地獄絵図に無関心。
こちらは左側に描かれた楽園追放。画面手前からアダムからイヴの創造→禁断の果実を食べる→天使に「うらー!」と楽園を追い出される…と、違う時間の出来事が、同じ絵の中に描きこまれています。
さて、ちょっと地獄から離れてリフレッシュしたところでモンスターウォッチに戻ります。
ここらへんは地獄に落とされる前に、罪を犯している人々を描いているように見えますね。怠惰や虚飾を表しているのか、それともこの男女が不貞中なのか…。
「うらー!」…いきり立ったペンギンみたいなモンスターが、カワイイ…。
「ごはんすぐできるからねー!」って感じのやさしそうなお母さんに見えますが、人間を鍋で煮てますがな。その隣の樽も、窓から漏斗に液体が注がれていて、凝っていて細かい…。
モンスターに運ばれている罪人ですが、このモンスター、杖とか使っててめっちゃ重労働じゃないの。逆に罪人の方がカゴの中で楽ちんな感じ。
…こんな感じで「最後の審判」のモンスターウォッチをしていると、軽く15~20分は見続けていられる作品です。
「最後の審判」裏にもモノクロームの絵があるよ!
「最後の審判」は後ろ側にも、ボスによるモノクロームの絵が描かれています。
後ろの絵はつい見逃してしまいそうになるので、しっかり後ろ側まで回ってみてください!