今回の奈良旅行は興福寺の国宝館で〆です!
私は興福寺の国宝館はこれで3回目ですが…興福寺国宝館は何度行っても飽きませんっ!
日本に来る外国人観光客に「奈良の興福寺国宝館だけは外せないよ!」と言いたい私。
興福寺国宝館の何がスゴイかというと…
…すみません、興奮ぎみですね。
そんなわけで、興福寺国宝館の見逃せない国宝仏像を、順路に沿ってご紹介していきます!
館内は写真撮影禁止なので、パンフレット画像で紹介します。
金剛力士立像 阿形・吽形(二体)
興福寺国宝館に入ると、まず最初に金剛力士像!
いきなりですよ!いきなり日本仏像の頂点といわれる、鎌倉時代の大傑作・金剛力士像!
表情の迫力、力強い肉体、精巧な衣服表現…慶派仏師の定慶が制作に関わったとも言われています。
金剛力士像といえば、興福寺のすぐ近く、東大寺南大門の非常に大きな金剛力士像が有名ですが、あまりにも大きすぎて、顔の表現は間近では見られません。
それに対し、興福寺国宝館の金堂力士像は155㎝弱で人間のサイズとあまり変わらず、ジッと拝顔することができて、目力にやられて目をそらせなくなってしまいます!
外にパワーを勢いよく出している放出系(ハンターネタ)の阿形(口の形が『あ』)に、パワーを内にグッと秘めている吽形(口の形が『ん』)。コンビとしても最強という感じです。
一番最初に金剛力士立像コンビがお迎えするせいで、最初のポイントからなかなか動けない私。興福寺国宝館さん、立ち上がりから攻めすぎです!
天燈鬼・龍燈鬼(二体)
金剛力士像と同じ場所に展示されているのが、かわいらしい二匹の小鬼です。
77~78㎝の像高で、本当に鬼の子どもみたい!
やけに気合が入った表情の天燈鬼と、頭に燈籠を乗せてとぼけた顔をしている龍燈鬼。
人間はどちらかのタイプに分けることができるんだろうな~と思うと可笑しいです。
私は間違いなく龍燈鬼タイプ…。
非常に愛嬌がありギャグキャラっぽいお二方ですが、彫刻の出来としては素晴らしく、日本仏像の最盛期鎌倉時代の作品。
龍燈鬼は運慶の子、康弁の作です。天燈鬼も龍燈鬼とセットになっている作品なので、康弁作ではないかと言われています。
天燈鬼と龍燈鬼は、上に紹介した金剛力士像と同じ場所に鎮座していますが、実は天燈鬼は口が「あ」の形、龍燈鬼は「ん」の形で、金剛力士像と同じ一対の「阿吽形」になっています。
小鬼たちが金堂力士像の真似をしているみたいで、微笑ましいです。
板彫十二神将像
順路の真ん中くらいに登場するのが、板彫十二神将像です。
完全に立体である彫像ではなく、ヒノキ板を彫った「板彫」で、半立体という感じです。
十二神将というと、薬師如来の周りをぐるっと警護し、十二支とも結びついて十二の方角を護るカッコイイ神様。
…なのですが、興福寺国宝館の板彫十二神将は、カッコイイというよりカワイイ!
一人一人顔つき・表情・髪型が違いそれぞれ個性的。
半数くらいは勇ましい表情をしているのですが、何体かは困ったような顔をしていて、思わず話しかけたくなるような親しみやすさです。
特に目立つのは迷企羅大将。絵のうまい漫画家が書いたような派手なアクションポーズで、筋肉や骨までしっかり彫り込まれ、足の裏までリアリティがあります。
興福寺国宝館に足を運んだのは3回目なのですが、今までこの板彫十二神将はそれほど目にとまったことはありませんでした。
2014年までは一直線に並べていましたが、もともとの配置、東金堂の薬師如来像の台座をぐるっと取り囲んでいたと思われる形での展示に変更したそうです。
作者の見せ方の意図と近い形に展示したことで、本来の魅力が伝わりやすくなったのかもしれませんね!
仏頭
板絵十二神将像の鑑賞を終えて振り返ると…神々しく端正な仏様が待っております。
来ました!仏頭!私は日本史で「興福寺仏頭」と習った、頭部のみが残った仏像です。
この頭部のみの仏像は、白鳳文化の傑作とされています(奈良時代より前!7世紀後半)。
白鳳文化というと、飛鳥時代と奈良時代に挟まれた時代で、古代日本が本格的な律令国家を成立させていく頃です。
国家としての成長期と言える時代ですが、こちらの仏頭は、時代の「若さ」が繁栄されたような、みずみずしくて清らかな顔立ちが印象的です!
中国文化の影響の強い飛鳥期の仏像とも、鎮護国家を背負い厳粛な雰囲気をまとった天平期の仏像とも違う、独創的でのびのびとした表情…いやー素敵なお顔!
何となく顔立ちがエキゾチックというか、横顔はギリシャ彫刻っぽくもあります。
ルネサンス美術大好きな私は非常に心くすぐられる美しさがあります。
興福寺は薬師寺のように白鳳文化を代表するお寺ではないですが、なぜ白鳳期の仏頭が興福寺にあるのかというと、ちょっとした歴史があります。
こちらの仏頭は、もともとは飛鳥の山田寺の如来像の頭部でした。
興福寺は鎌倉時代に復興事業を行い、その際に東金堂の本尊として山田寺から「迎えられた」…とパンフレットには書いてありますが、実際には強奪したとか…。
この山田寺からやってきた如来像は1411年に火災に遭い、首から下は失われてしまいました。
残された頭部は新しく制作された本尊の台座の中にしまわれたのですが、そのうち忘れ去られてしまい、1937年に東金堂を修理した際に台座の中に仏頭が見つかって大騒ぎ!
波乱万丈の歴史を持つこの仏頭は、頭部だけでも約1mの大きさ。全体が残っていたらどれほど雄大だっただろう…と、ロマンをかきたてます。
十大弟子立像(六体)
国宝館の順路も終わりに近づいてきたころ、大トリの前に登場するのが十大弟子立像です。
十大弟子とは釈迦に付き従った弟子の中で主要な十人を指します。「十大弟子」のうちの六体が残っています。
十大弟子は人間であり、仏像とくらべると当然人間なのでシンプルで、やや大人しめの立像となっています。
しかし一人一人が深い内面性がよく表れた、絶妙な表情をしていて、つい顔をのぞきこんでしまいます。
どの像がどの弟子を表しているのか正確にはわからないそうですが、須菩提と呼ばれる像が特に有名です。
須菩提像は、他の像とくらべて若々しく見え、淡い微笑みを浮かべています。
そのため、この像は美男子といわれる阿難として造られたのではないか?という説もあります。
現代のイケメンとくらべると、目が切れ長で細く口元もひかえめでおとなしめの顔立ちですが、このようなタイプが十大弟子像が造られた奈良の天平時代にはイケメンだったのかなあ…なんて、顔をジッとのぞきこんでしまいます!
八部衆立像(八体)
興福寺国宝館の大トリを務めるのは、八部衆立像です。
以前読んだ仏像の本に「日本仏像総選挙をしたら優勝候補だろう」などと書かれていた、阿修羅像が特に有名です。
「八部衆」というだけあって、阿修羅像は、実は八人仲間のひとり。
阿修羅人気を察してか、国宝館でも阿修羅をセンターにしていますが、他の仲間たちも非常に魅力的です。ぜひ阿修羅像以外もじっくり鑑賞してください。
簡単に八部衆をご紹介すると…
五部浄 | 端麗な顔立ちをしている。上半身のみ残る |
畢婆迦羅 | ヒゲを生やしたシブイ壮年像 |
鳩槃荼 | 髪を逆立てて目を見開いた表情が印象的 |
乾闥婆 | 獅子の冠をかぶって目を閉じている |
阿修羅 | 憂いを秘めた少年像。日本仏像界のスター |
沙羯羅 | おりこうさんな子どもに見える |
緊那羅 | 角を生やし額に3番目の目があり神秘的 |
迦楼羅 | 鳥の頭を持つが不思議とリアル |
阿修羅が一番人気ではあるでしょうが、八部衆それぞれが魅力的な個性を持ち、おそらく「推し」が見つかるのではないかと。
私は乾闥婆推しですよ~!獅子のかぶりものがめっちゃカワイイし、音楽神ゆえ目を閉じているのが風情たっぷりです!10分くらい見つめていられました!
連れは五部浄推しでした。「全身残っていたら阿修羅に負けないのに!」と、センターに安置されている阿修羅をライバル視していました…。
おそらく子どもたちに人気なのは鳥の頭をした迦楼羅でしょう。ユーモラスですが同時に真剣なまなざしがカッコよくもあります。
八部衆を鑑賞するといつも思うのは、現代の漫画・アニメのキャラの雰囲気がある…ということ。
五部浄や乾闥婆がかぶっている動物のかぶりものはめっちゃコスプレっぽいし、迦楼羅はそのままアニメとかに出れそうだし、全員の顔立ちがしっかり分けられているあたり「キャラ立ち」もお見事。
八部衆を主人公格にした漫画・アニメもあります。「天空戦記シュラト」「聖伝」など。
日本の漫画・アニメの文化の土壌は、仏像などの美術品を通じて、千年以上前から醸成されてきたのではないか…。江戸の浮世絵などもアニメっぽい雰囲気がありますしね。
興福寺のパンプレットによると、八部衆の4体(阿修羅・五部浄・沙羯羅・乾闥婆)がイケメン&カワイイ少年像なのは、光明皇后の「考え」…ぶっちゃけ趣味が反映された可能性もあるのではないかと。
光明皇后はヲタクの祖!?何か親近感わいちゃいますね!
八部衆はインド神話を由来とする神です。仏像のカテゴリーでは「天部」に分類され、如来や菩薩像の周囲に配置されます。
興福寺の八部衆も、もともとは西金堂本尊の釈迦如来像の周囲に配置されていたそうです。
たび重なる火災で釈迦如来像は失われてしまいましたが、八部衆は大きすぎず重すぎず(約150㎝約15kg)のおかげで、火災のたびに運び出されて今に残っているのだとか。
とにかくそれぞれ個性的な八部衆を、全員そろって拝顔できるなんて、興福寺国宝館は本当に幸せな空間なのです!
国宝館見学に必要な所要時間は?
興福寺国宝館で見逃せない仏像を20体ご紹介しました(板絵十二神将は全部でひとつと数えました)。すべて国宝です。
興福寺国宝館には、他にも国宝の仏像や工芸品が多数ありますし、重要文化財の仏像も次から次に現れます。
「全部見学するなら所要時間はどのくらい必要か?」というと、目安は1時間です。
展示は非常に充実していますが、館内はコンパクトで、それほど広くない空間にギュッと国宝・重要文化財が詰まっている感じです。1時間あればある程度しっかりと見学ができます。
国宝館のパンフレットは購入するべき?
興福寺国宝館は、展示の目録代わりになっているパンフレットを100円で販売しています。
このパンフレットを購入するべきか…ですが、パンフレットと同じ文言の説明版がある展示がいくつかあります。
ですが、説明が省略されている展示もあります。
パンフレットは順路通りに展示が紹介されているため、パンフレットがあった方がスムーズに見学できるというメリットもありました。
館内は写真撮影が禁止なので、記念にパンフレットを購入するのもアリかもしれませんね。
まとめ
興福寺国宝館の見逃せない仏像を、厳選20体ご紹介しました。
ここで紹介しきれなかった魅力的な仏像や工芸品が、興福寺国宝館にはまだまだあります。
私は4回奈良に行って、そのうち3回は国宝館に入っています。国宝館は何度入っても感動します。
昔の国宝館は倉庫みたいで、阿修羅像なども驚くほど無造作に置かれていましたが、現在の国宝館はまるで美術館。
内装はシックで、展示物も非常に見やすいです。阿修羅像をはじめ、仏像をかなり間近で鑑賞できます。
これほど貴重で素晴らしい日本仏像を一度に鑑賞できるのは、興福寺国宝館だけでしょう。奈良に行ったらぜひ足を運ぶことをおすすめします!(国宝館の回し者みたいな私。ただのファンですっ!)